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LYZON編集部

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AIの未来を語る-ELYZA代表 曽根岡 侑也 × LYZON代表 藤田 健による生成AI対談

生成AIの技術は、今や私たちの生活や仕事のあり方を根本から変える可能性を秘めています。

言葉や画像、音楽まで、AIが「創造する」時代が現実のものとなり、その可能性は限りなく広がっています。しかし、その進化の先に待ち受ける未来とは、一体どんなものなのでしょうか?

今回は、生成AIの最前線を走るELYZA代表 曽根岡 侑也氏と、LYZON代表 藤田 健氏がそれぞれの視点から、生成AIがもたらす技術的な革新、ビジネスや社会への影響、そしてその未来に対する展望を語り合います。

業界のリーダーたちによる対談を通じて、AIが描く未来像を深掘りし、私たちがどのようにその変化に対応すべきかを探ります。

AI対談動画



01.

株式会社ELYZAのビジョンと取り組み

二つの柱: 技術開発と社会実装

藤田:お久しぶりです。6ヶ月ぶりぐらいですね。
先ほどもお話していましたが、まずはELAYZAの取り組みについて、どのような事をしているのかお伺い出来ればと思います。よろしくお願いします。

曽根岡様(以下、敬称略):ありがとうございます。
おそらく見られている方の中には初めましての方も多いかと思いますので、簡単に自己紹介も含めて会社のご紹介をさせていただければと思います。

現在、株式会社ELAYZAで代表を務めております、曽根岡と申します。
元々は東京大学のAI研究室、松尾豊先生の研究室に所属しており、そこからスピンアウトする形でELAYZAを立ち上げました。

ELAYZAは生成AIの分野で活躍しており、特に大規模言語モデル(Large Language Models, LLM)に特化した技術開発を行っています。

今年の4月からは、KDDIグループと資本業務提携を結び、さらなる技術革新に取り組んでいます。また、私たちの活動として、2019年からLLMの研究開発に着手し、主にLLMの作成と社会実装の2つの軸で活動を進めています。

どのように活用すると社会に価値が出るのか、業務や生活がどのように変わるのか、といった社会実装の活動にも力を入れています。一つずつ少しブレイクダウンしてお話ししますと、2019年に研究開発を開始し、2020年には日本語で人間を超える性能のモデルLLMを作り上げました。

2021年から2022年には要約AIや執筆AIをリリースし、昨年の8月からはChatGPTに追いつけるような国産モデルの開発にも取り組んでいます。

現在、Meta社のLlama(ラマ)シリーズのモデルを基に、日本語特価の学習を進めています。
最近のリリースでは、700億パラメーターのモデルが日本語性能でGPT-4やGoogleのモデルを上回る結果を出しており、国内でここまでの成果を出せたのは非常に喜ばしいことです。

例えば1~500までの数字入力に必要なキーボード操作回数を計算させると、1桁の数字は1回、2桁の数字は2回…といったように、GPT4などのモデルでも出来るタスクが我々のモデルでも可能になっています。
このような取り組みを通じて、選ばれる言語モデル(LLM)を目指し、汎用モデルを基に業界や企業、特定タスクに特化したLLMを開発しています。

実践例: AIによる業務効率化とその効果

曽根岡:社会実装の例として、JR西日本や明治安田生命、マイナビや東京海上日動など、多様な企業の業務効率化に貢献しています。

マイナビとの取り組みでは、求人広告の作成を支援するために、生成AIを活用したシステムを導入し、職種や給与などの情報を入力すると、求人原稿が自動生成される仕組みを構築しています。このシステムを活用して約600名が効率的に求人原稿を作成できるようになり、タフな作業の負担が大幅に軽減されています。

また、東京海上日動との取り組みでは、事故対応のオペレーターとLINEチャットのようにやり取りする際、毎回の返信を生成AIがドラフト化し、オペレーターが少し修正するだけで対応できるようにしました。これにより約50%の業務効率化を達成することが出来ました。

さらに、三井住友カードとの取り組みでは、お客様からの質問に応じた回答を生成するために、社内データベースを探索し、関係する情報を基にAIがドラフトを作成します。以前はオペレーターが1から調べて返信文作成していましたが、AIの支援により修正のみで対応できるようになりました。

我々「ELAYZA」という会社は、生成AIの基盤技術である言語モデル(LLM)の研究開発から、実際の業務に活用するための実装までをカバーし、さまざまな企業と協力して社会実装を推進しています。

Long-Contextと日本語モデルの進化

藤田:日本語化は今どれぐらい注目しているのかを伺いたいです。

曽根岡:日本語対応に関しても、近年はMeta社やアリババ社、Googleが日本語に対応したモデルを発表するなど、グローバルに進展がみられるようになっています。
日本語対応に関しては、以前よりもメタ社やアリババ社、Googleなどのモデルが日本語に強くなり、日本語特化の調整だけでは大きな付加価値が出にくくなっていると考えています。
そうした中で、業務特化型の調整や、ファインチューニングとRAG(Retrieval-Augmented Generation)の組み合わせが重要となっています。

藤田:先ほど話していた業務特化などのファインチューニングとRAGと両方あると思うが、どちらが重要か組み合わせてどうなのか知りたいですね。

曽根岡:現在、さまざまなチューニング方法が進化しており、「Long-Context」という概念も登場しています。これは、モデルが扱える文字数が1万文字程度から200万文字程度まで拡張されたことで、新たな可能性が生まれたものです。

Long-Contextの利点としては、例えば大量の社内ドキュメントをそのまま200万文字の中に投入することで、検索の必要がなくなり、効率が向上する点が挙げられます。

また、Many-Short-Tuningと呼ばれる方法も可能になり、200万文字内に複数の正解データを並べて例示することで、学習データを追加せずに調整が行えるという新たな技術が注目されています。

藤田:このような技術が進化することで、質問文に対する応答精度の向上が期待出来るという事ですね。

曽根岡:質問文を長く書けるようになったことで、社内の大量のドキュメントを含質問文に含めて「この中から有給申請の方法を教えてください」といった形で質問すると、RAGをわざわざ構築しなくても済む可能性が出てきています。こうした小さな技術変化が進んでいるのです。

藤田:ありがとうございます。

02.

LYZONによるAIへの取り組み

革新的なチャットボット: RAGの活用

藤田:LYZONのAIのサービスの紹介もさせて頂こうと思います。
現在進めているAIサービスとしては、RAGを活用したChatbotと業務の自動化があります。Microsoftのテクノロジーをフル活用して、OpenAI StudioやCopilot Studioを使い、ゼロから開発せずに迅速かつ低コストで導入できるサービスを提供しています。
これにより、新しいモデルが登場した際には即時に切り替えられる利便性も備えています。

このChatbotは、MicrosoftのSharePointと連携させて、データを整理することで性能が向上する仕組みになっています。
SharePoint内にデータを綺麗に配置し、RAGと組み合わせることでAIのパフォーマンスが最大限発揮されます。データ整備のサポートや利用時の伴走も含めて、実際の運用を支援しています。

この図を使って詳しい説明をすると、Copilot StudioとPower Automateを中心に、OpenAIとAI Searchを組み合わせて回答を生成する仕組みになっています。
Microsoftの技術を活用し、インデクシングしたデータを基に検索と応答を行います。

このモデルでは、低コストかつ迅速に提供することを目指し、小規模のお客様にもChatbotを活用していただけるようにしています。
独自のLLMは開発していませんが、LLMとRAGを組み合わせて、効率的なChatbotサービスを提供しています。

AIを駆使した次世代の業務委託サービス

藤田:業務AI化を実現する業務委託サービスをし、AIによる業務委託サービスも展開しています。
これは、まず一般的な業務委託の形で業務を引き受け、お客様が通常通りタスクを依頼できるようにしつつ、裏でAIやRPAを活用して業務を徐々に自動化していくサービスです。
リモート常駐の形式で進め、業務担当者が手動で行っていた作業をAIやRPAによって効率化します。

このサービスのポイントは、AIの導入が進むまでは担当者が通常通り業務をこなしてくれるので、お客様が安心して利用できることです。業務がAIによって効率化されることで、生産性が向上します。また、AI導入にあたっての環境整備や、業務フローの暗黙知を明文化するプロセスが重要で、これをサポートすることで、自動化への抵抗感を軽減し、安心してAIを活用できる環境を整えています。

AIとRPAを組み合わせたサービス提供も行っており、作業の自動化を効率的に進めています。
AIコンサルタントやエンジニアの不足が問題となる中、業務担当者が引き受けられる部分は対応し、専門的な部分だけAIチームが担当することで、コストを抑えた運用が可能です。
まずは業務リストを洗い出し、AI化の検討と実施、引き継ぎなどを進めている状況です。

LYZON社内でのAI活用

藤田:社内のAI化推進として、設計書の検索を効率化する取り組みも行っています。
2300件もの設計書をシェアポイントに格納し、エンジニアが必要な情報を迅速に検索できるようにしました。これにより、設計書を読む時間が大幅に削減されました。

プレスリリースの作成では、文字数やフォーマットのルールを指定して自動生成しています。
社内でのAI活用は、他にも労務関連の回答の自動化や、マーケティングコンテンツの自動生成などにも広がっています。労務規則をシェアポイントに保存し、よくある質問に対して自動で回答する仕組みを整備しています。

03.

生成AIの動向と将来への展望

AI事業を展開するユニコーン企業の動向

藤田:Sakana AIについてどう思いますか?

曽根岡:日本国内でも一番話題になっている企業だと思います。
約200〜300億円を日本企業から資金調達をし、成功させユニコーン企業となりました。

生成AI領域の競争構造はレイヤー構造になっておりまして、一番下が計算機インフラ(GPUやデータセンター)から始まり、モデル(LLMや画像生成モデルなど)、API(エンジニアが使える窓口)、そしてアプリケーションという4層構造となっています。

基本的にレイヤー構造になっているが、優れたモデルを持っていてもAPI部分はGoogle、AWS、Microsoftが独占しているため、ビジネスの広がりを作るのが難しい市場構造になってしまっていたりします。

今目指している世界が市場構造の中でどこを目指しているのかは分からない部分です。
研究開発だとLLM の部分ですが、今後良いモデルが出たらMicrosoftなどのプラットフォームに載せてもらう形になりますが、そこまで儲かるビジネスモデルにはならないのではと思っています。

彼らは20人ほどでOpenAIを2015年に研究機関として設立しました。
始めは研究機関でしたが、最先端のAIを研究する企業とのことでお金を集めイノベーションとなる技術が出たら市場出す際にインパクトを与えて注目を集めていきますよ。という設計だとは思っています。

藤田:そういう意味ではアプリケーションとLLM、ELYZAだったら両方攻めてアプリケーションもちゃんと攻めてるというところは違いますか?

曽根岡:我々の企業は市場構造の中でLLMとアプリケーションに焦点を当て、KDDIのサポートも得ながら競争力を確保しています。このため、競合としては意識していないものの、注目すべき存在として認識しています。

SLMとLongーContextの今後

藤田:SLMについてはどう考えていますか?

曽根岡:SLM(Small Language Models)についても話題になっており、以前は重要視されていましたが、最近では大規模な汎用モデルの提供者がコストを下げていることから、処理速度や運用コストの面でSLMの価値が変化してきていると感じています。
ただし、セキュリティが厳しく、大きなモデルを置けない環境ではSLMが引き続き重要であるため、完全に無価値にはなっていません。SLMの活用は引き続き注目されるものの、限定的な用途に留まっていると感じています。

藤田:最近注目しているAIなどありますか?

曽根岡:最近の注目テーマとして、OpenAIが提供する音声入力・出力APIも挙げられています。
これにより、音声を用いたChatbotが実現可能となり、ビジネスでの活用方法が議論されるポイントとなっています。

また、Long-ContextとRAGの難しさについても話題になっています。
RAGは検索エンジンと生成AIを組み合わせたものですが、検索エンジンの精度が限られているため、例えば企業内のドキュメント検索で期待される結果を得られるのは60~70%程度です。

この課題に対して、Long-Contextを使うことで検索を省略し、膨大なドキュメント情報を直接モデル内に格納する方法が提案されています。これにより、より正確な情報提供が可能になると考えられています。

藤田:AIの性能をフルに活かせるのがLong-Contextということですね。

曽根岡:RAGとLong-Contextの比較では、メンテナンスのしやすさからLong-Contextの方が有利なケースもあると考えられています。

藤田:RAGではなく、Long-Contextで長文を簡単に投げやすくするかが重要になるのかもしれないですね。

曽根岡:RAGはデータが事前に準備されている分、質問が軽くて済むメリットがありますが、Googleの論文でも示されているように、場合によってはRAGとLong-Contextの融合が最適なアプローチとされています。

AIエージェント: 次代を拓く革新的概念

曽根岡:最近注目されている「エージェント」という概念についても触れられています。
AIエージェントは単にテキストや画像を生成するだけでなく、自らの行動を設計し、具体的なアクションを実行する能力を持っています。

例えば、「大阪に出張するのでホテルを予約してほしい」と依頼すると、AIエージェントはホテルの検索や予約といった一連の操作を自動で行っていたりしている。

これにより、エージェントは行動計画を立てウェブブラウザを操作し、APIを活用して実際の予約を行うなど、より高度な自動化が実現される可能性があります。この技術は、例えば研究者のプロセスをエージェントが代行するなど、幅広い応用が期待されています。

AIエージェントの応用として、研究者のプロセスを自動化する試みも進んでいます。
例えば、先行論文を調査し仮説を立て、その仮説をプログラミングで検証し、結果をまとめて論文を執筆するといった一連の流れを、AIが自動で行えるようにする実験が行われています。
これにより、全自動で論文作成ができる可能性が出てきています。

藤田:なるほど。そういう意味ではLYZONでも似たようなことをやっていまして、コラムやコンテンツを自動生成しようと思っています。自動生成したコラムやコンテンツを人間がチェックしてどんどん作成しようとしています。

コスト削減にもつながりますし、複数のテーマで素早くコンテンツを量産できるので、マーケティング活動にも役立つという事をしている。
業務全体を自動化していく流れが加速すれば、さらに効率化が進みますね。

曽根岡:そうですね。

孫さんが出していたAIの登り方で言うと、まずはChatGPTのようなものがあり、次は博士課程や専門家ぐらい賢くなって、さらに行動が出来てというような感じでレイヤー切っているので。
次のステージは正にそこになるのではと思っています。

AI技術の進化については、次のステージとして専門家レベルの知識と行動力を持つAIが登場し、さまざまな分野で標準化されていくと期待されています。

藤田:今後も最新のAIの動向について情報共有ができることを楽しみにしています。

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